スマートフォンを充電するために購入したモバイルバッテリーのお話をさせて頂きます。
近年問題になっている「小型充電式電池」による出火。
他人事のように聞き流していましたが・・・まさか自分が体験してしまうとは。
モバイルバッテリーを持っている人は本当に気を付けて扱って下さい!
ということで、今回は筆者の実体験ヒヤリハットを共有することで「電気火災」を少しでも身近な問題だと感じて貰えたらと思います。
リチウムイオン電池の問題
いつどこでも知りたい情報を簡単に入手できる情報化社会において、もはや現代人にとってスマートフォンは手放せないツールとなりました。
外出先で電池が切れようものなら一大事。
少し前までは電池が切れると、慌ててコンビニに駆け込んで「乾電池式充電器」を購入する人をチラホラ見かけたものです。
しかし、近年では、乾電池式充電器にとってかわり、リチウムイオン電池のモバイルバッテリーが急速に普及しました。
リチウムイオン電池は、製造工程を完全自動化することができるのでコストダウンがしやすく低価格化しているので購入する人が増えているのだと思います。
そんな筆者も、求めやすい価格だったので購入した口です。
そのリチウムイオン電池の普及拡大と共に問題となっているのが「電気火災」です。
身近な電気火災
リチウムイオン電池関連の出火元で発生件数の多かった製品順に挙げると・・・
- モバイルバッテリー
- 掃除機
- ノートパソコン
- スマートフォン等の携帯電話機
- タブレット
などの製品から出火しているようです。
やはりモバイルバッテリーは断トツの発生件数。
それだけリチウムイオン電池が普及しているのですね。
これらの製品は販売元が定めた使用方法を厳守して使用した場合でも出火することがあるので、気軽に使ってきたこれまでの蓄電池と同等の扱いをすると大変危険です。
リチウムイオン電池の出火原因
正しい使用方法でも発火する可能性はありますが、以下のような誤った使用方法が主な出火原因になります。
- 誤った充電方法
- 非純正品バッテリーの使用
- 衝撃を与える
- 分解する
などなど。
筆者は
「誤った充電方法なんてしないし、モバイルバッテリー充電器は付属純正品だし、意図的に衝撃を与えたり分解しようと思わない」
ので、自分の一般的な使用方法の範囲にいるという認識でいました。
ところが・・・
筆者のヒヤリハット
購入から1年ほど、使用回数は2回程度のモバイルバッテリー。
旅行で少しだけ使用したので帰宅後に充電しました。
充電ケーブルは購入時に付属していた純正品を使用。
充電してから1時間程経過したところで、パートナーが帰宅し「何か焦げ臭い」と一言。
筆者は鼻炎のため臭いには鈍感。火も使っていなかったので特に気にすることなく聞き流しました。
その後もパートナーが「コタツのファンような扇風機のモーターのような、何か焦げた臭いがする」とデスクのコンセント回りを確認しだす。
見かねた筆者は重い腰をあげてパートナーの周辺にあるコンセントをチェックして回る・・・
そして原因を突き止めた。
充電中の「モバイルバッテリー」から煙がたっているではないか!
正確にはUSBコネクタが焦げて煙をあげていた・・・。
慌ててアダプタをコンセントから抜き、焦げた部分が畳に触れないよう流し台にモバイルバッテリーバッテリーを移動。
モバイルバッテリーに水をかけるべきか否か、消化器を準備しておくべきか・・・
電気火災の正しい対処法が知識として無かったものだからあたふた。
とりあえず厚手の鍋を上から被せて覆う。(爆発したら怖い。バッテリーが蓄熱しないよう風通しを良くして覆った。)
この時、和室で充電していたので、コネクタが焼き切れて畳に引火していたかもしれない、と思うとゾッとします。
筆者の場合・・・原因は何だったのか
▲焦げて焼き切れたUSBコネクタ
原因は・・・充電方法の誤りだと思います。
- 本体に熱をこもらせた
- 過充電
短絡保護のためにモバイルバッテリーを袋に収納しているのですが、バッテリー本体の半分程を短絡防止袋で覆ったまま充電しました。
半分とはいえ袋で覆っていたことでバッテリーのUSBプラグに熱が貯まってコネクタが焦げしまったのかもしれません。
若しくは、使用時間5分程度だったのに追加充電したことで過充電になってしまったのかもしれません。(常にフル充電しておきたい質。電池劣化に繋がるけど・・・)
自分の中では「誤った使用方法」という認識がなかったので大反省しました。
ダルマストーブの上でビニール袋を乾かすようなレベルの恐ろしい行為だったのかも。
ちなみに、モバイルバッテリー(型番PB-7210)は「リチウムイオン電池」ではなく「リチウポリマー電池」でした。
コネクタの焦げだけで済んだ理由はこの違いか?などと脳内がご都合解釈をしはじめたので「リチウムイオン電池」と「リチウポリマー電池」について少し調べてみました。
イオンもポリマーもリチウム二次電池に分類
リチウムイオン電池もリチウムポリマー電池も、電池の動作原理から見れば同じものらしい。
違いは下記表の通り。
リチウムイオン電池 | リチウムポリマー電池 |
電解質:有機物の電解液 | 電解質:高分子ポリマー素材 |
揮発性が高く可燃性 液漏れ・不純物混入・制御回路不良などの 製造工程全自動化でコストダウンしやすい | 燃えにくい 短絡しても膨張するだけ 有害物質がリチウムイオンより大幅に少ない 製造工程は自動化困難でコストがかかる |
(参考:https://www.diatec.co.jp/support/details/lithium.html)
電解質が液体かゲルかの違いで、共にリチウム二次電池に分類されます。リチウム二次電池は過充電や衝撃に弱い特徴があるようです。
リチウポリマー電池だったから発火せずに済んだ・・・という訳では無く、たまたま運が良かっただけのようです。(多少は「燃えにくさ」で救われた部分もあるかもしれませんが、素人の筆者には分からない領域)
リチウム二次電池はスマートフォンやドローンなど幅広く使用されていて生活を飛躍的に便利にしている反面、安全性という重大な欠点がある電池。従来の蓄電池との特徴の違いを理解して使用する必要があります。
バッテリー充電時の注意点
充電可能回数を守る
充電中はその場を離れない(目を離さない、不在にしない)
バッテリー充電は純正充電器を使用する
過充電は避ける(残量60%ほどを目安にする)
異臭異音等の異変があれば直ちに充電中止する
高温の部屋で充電しない
使用直後などで熱を帯びた状態で充電しない
(参考:明治大学あんぜんだよりhttps://www.meiji.ac.jp/safety/6t5h7p00000r75xi-att/newsletter20191101.pdf)
充電回数なんて数えて無いし、
充電をセットしてから外出するから異音異変には気付かないし、
USBケーブルなんて大抵の機器が挿し口合致するから使いまわすし、
電池残量60%になれば急に使いたい時に困るから充電してしまうし・・・
・・・。
自分としては「通常通りの使用方法」とう認識でしたが、リチウム二次電池の扱い方としては電気火災につながるNG行為だった。
絶対順守!使用時の注意点
製造販売元が提示する使用規定を守る
分解したり衝撃を与えない
夏場の車内やストーブ前など高温になる場所には絶対に置かない
異臭異音変形等の異変があれば使用中止する
電池持ちが急に悪くなったと感じたら使用中止する
バッテリーが膨張したら使用中止する
持ち歩く時は短絡防止措置をとる
PSEマークやMCPCマークのある安全基準の守られた製品を使用する
(参考:明治大学あんぜんだよりhttps://www.meiji.ac.jp/safety/6t5h7p00000r75xi-att/newsletter20191101.pdf)
バッテリーによる電気火災が発生した時の対処法
異変を察知した場合、可能であれば素早くコンセントを抜く!
火花が飛び散っている時は身の安全を優先し近寄らない。火花が収まったら消火器や大量の水で消火する!
これが基本的な初動対応。
火は燃え広がるのが恐ろしいほど早いので命を守るために1分1秒も無駄に出来ません。基本的な対処法は頭の片隅にでもおいておくと万が一の時に行動しやすくなります。
危険を感じたら迷わず119番通報しましょう!
筆者の場合、コネクタが焦げて煙が立った程度ですが、下記のような対処をしました。
- 急いで充電器のアダプターをコンセントから引き抜く(直ちに充電池への電気供給を止める)
- 爆発・発火しても延焼しない場所に移動する(流し台+可燃物を遠ざける)
- 暫くの間、バッテリーから目を離さず状態観察をする(いつでも初期消火できるよう備える)
異変の生じたバッテリーは爆発する可能性もあるので、衝撃を与えないよう取り扱いに細心の注意を払いながら、万が一発火しても引火しないような場所に移動させました。(望ましのは、コンクリートやアスファルトで周囲に可燃物のない広いところや、庭に穴掘って埋める等)
今回のヒヤリハットで、リチウム二次電池は常に発火のリスクと隣り合わせにあることを痛感しました。
バッテリーによる火災を未然に防ぐ心得
- 購入する時は「PSE マーク」や「MCPC マーク」が付いている製品を選ぶ
- 購入時付属している機器など純正品を使用する
- 製品規定の充電電圧を守ること
- 異常が生じた製品は直ちに使用をやめること
- 取り外し不可の充電池は自分で分解・交換しようとしないこと
- 廃棄する場合は、リサイクル協力店の回収ボックスへ出すこと
(参考:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-ooi/topix/denchi.pdf)
特に6の「廃棄方法」についてですが、リチウム二次電池の普及拡大とともにゴミ処理施設でも大問題となっています。
家庭ごみとして廃棄してしまうと、ゴミ収集の際に発火して車が炎上してしまったり、プラント火災の原因となります。各方面の業者さんへ迷惑が掛かるのはもちろん、それ以上に意図せず負傷者を出してしまう可能性も十分に考えられます。大変危険な行為です。
家庭ごみとして廃棄せず、リサイクルボックスが設置されている家電量販店などで廃棄(リサイクル)しましょう。
実例から学ぶ・・・危険な兆候
出火前にみられた特徴的な兆候や誤った行動(事例から学ぶ)
・ 出火の1~2週間前からバッテリの減りが速くなった。
・ 充電中に以前と比較して熱くなっていた。
・ 内部から膨張し、変形していた。
・ 充電しても、満充電にならない。
・ 動作不良を起こしていたが、充電してみた。
・ 充電中にパチパチという異音がしていた。
・ 充電中に異臭がした。
・ 水没したが、時間が経ちまた使用できるようになったので使用していた。
・ 夏季の車内など高温となる場所に長時間放置していた。
・ 長期間使用しておらず、完全に放電してしまった。
・ 充電部分の差込み部分の接触が悪かったが、そのまま使用していた。
・ 初期不良で使用できないにも関わらず、繰り返し使用を試みて充電する。
・ 専用の充電器で充電したことがない。
・ 専用充電器が壊れ、差込みの合う充電器を使っていたが、電圧の確認などはし
たことがない。
・ カバンなどに入れていたが、カバンを放り投げたりして、強い衝撃を与えてい
た。
・ 小動物を飼育しているが、噛んだり、唾液が付着したことがある。
・ 廃棄の際に分別のために分解する。
・ スマートフォンなどをズボンの後ろポケットに入れたまま座ったりして、強い外力を与えた。(出典:東京消防庁 報道発表資料https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kouhouka/pdf/281222.pdf)
幾つか自分にも心当たりのある扱い方があります。
皆さんはどうでしょうか?
そのような扱いを続けていると筆者のようなヒヤリハット体験をしてしまうかも・・・お気を付けください。
まとめ
前車の覆るは後車の戒め・・・
筆者のようなヒヤリハットを未然に防ぐためにも、取扱説明書を熟読しリチウム二次電池の特性を理解して使用しましょう。
とは言っても「普段からNG行為に該当する扱い方をしているけど、これまでに異変は生じた事が無い。発火した人はよほどの扱いをしたのではないか?」と思ってしまいますよね。
ハインリッヒの法則で言うと、119番通報されていない筆者のようなヒヤリハット事例は山のようにあるでしょう。今までは大丈夫だったとしても「たまたま発火に至らなかった」だけで、危険行為や有害要因が幾重にも重なった時には・・・お気をつけ下さい・・・
使用方法を守っていても初期不良などで火災に至るケースもあります。異変や兆候があれば使用を中止し、新しいものに買い替えるかメーカーに相談するのが最善かと思います。
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